劇団四季・宝塚・東宝ミュージカル・子供ミュージカルなど、目指すミュージカルはそれぞれでも、避けては通れない『歌』の試験が絶対にあります。
歌は、誰でも歌えるし簡単そうに思えますが、実はとても奥深く、正しい発声というものが分からないという方は多いと思います。だから歌のレッスンに通うのですが、歌のレッスンに通ってもなかなか思うように声が出ない、声をもっと楽に出したいと、何か方法はないか探したくなります。
そこで今回、歌を教えている私が実際に生徒さんに読んでもらっている発声に関する本を紹介いたします。
発声の基礎とトレーニング
『声楽家をこころざす人へ 発声の基礎とトレーニング~日常の心構えと練習の仕方~』
(著者:グレアム・ヒュウイット/東芝EMI音楽出版)
この本は、「声楽家をこころざす人へ」と表題に書いてありますが、声楽だけではなく歌の道をこころざす人全般に書かれている本になっています。
舞台に立ちたい!という方で、声楽を独学で習得する方はほとんどといっていいほどいないと思います。
先生に習い発声を教えてもらいますが、レッスンだけでは分からなかったり、うまくできないことがあったりますよね。
そんなときのサポートになるのがこの『声楽家をこころざす人へ 発声の基礎とトレーニング~日常の心構えと練習の仕方~』の本です。
呼吸法、姿勢、表現、練習の仕方が初心者にもよくわかるように書いてあります。
おそらく、声楽のレッスンに通っている方なら、先生が教えていることがより詳しくかかれていていることがわかると思います。
そして、先生から言われていることの先の意味を知ることができるようになっていくことができるようになるでしょう。
そして、私が思うこの本の最も優れたところは、「上手く歌えない原因」についての原因と対処法が10通り詳しく書かれていることです。
上手に歌えるようになりたいのであれば、上手く歌えない原因を突き止めそれを改善していくことが大切です。
そして上手く歌えない原因というのは、この本に書かれている10通りに当てはまるのです。
上手く歌えなくて悩んでいる人は、まずこの部分を読み、それを改善できる方法を知り必要な練習法をこの本の中で見つけることをおすすめします。
また、歌手になるために必要な日常の心がまえについて書かれている本は少ないと思います。
この日常の心がまえこそが、舞台に立つために必要でなければオーディションに受かることはないと言っても過言ではないと思います。
発声のメカニズム
『「医師」と「声楽家」が解き明かす発声のメカニズム~いまの発声法であなたののどは大丈夫ですか~』
(萩野仁志・後野仁彦共著/音楽之友社)
この本がおすすめな理由は、「発声指導の会」をしている耳鼻咽喉科のお医者さんである萩野さんと声楽家の後野さんが書かれている本であり、医学的見解をもって発声法や声のトラブルの原因と対処方法が書かれているからです。
歌を歌いすぎて喉が枯れて声が出ない、のどが痛くて声が出ない、など、歌を歌い続けると何かしら喉に関するトラブルが起きたりします。オーディション間近や大切な試験、舞台の時に声が出なかったら、その出なかった声がその時の評価になってしまいます。
「喉が痛くて声が出ない」「風邪をひいて声が出ない」「調子が悪くて声が出ない」などは言い訳になりません。
また、「歌いすぎて声が出なくなる」ということは何かしら歌い方が間違っています。
2,3時間歌って声が出なくなるようでは、舞台で歌えるようにはなりません。
この本は、歌を歌うに必要なのどを正しく使うことを声楽家のプロと医学のプロの両方の視点を合わせたところから分かりやすく教えてくれるのどの教科書です。
歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと
『歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』
(メリージーン・アレン、クルト=アレクサンダー・ツェラー、メリッサ・マルデ著/春秋社)
この本は、歌うジャンルを問わず、『声をつかう』という体を楽器として使う方すべてに書かれた本です。
歌うときには、声帯の筋肉を使います。そして声帯の筋肉を使う際に付随して使われる筋肉がでてきます。
歌うときに必要な筋肉を正しく使っていれば問題はないのですが、どこかしら緊張したり力が入ってしまったりして力を入れる必要のない筋肉を使ってしまうことがあります。
こういう場合、たいていの方は無意識に力が入ってしまっています。体の使い方を知らないでいるからです。
この本は、歌うときの体の構造、声帯の使い方、声のメカニズム、声を出すときに関与してくる体の筋肉が事細かにかかれています。この歌うときに関わってくる体の筋肉の使い方を知っていると、驚くほど歌が変わってくるのです。
私がこの本を通して学び飛躍的に歌が向上した秘訣のひとつに、『ボディマッピング』というものがあります。
自分の体がどこにどうついていているのか、ということが人は意外に分かっていないものです。
まず自分がどう動いているか、客観的な目を持つことがどれだけ自分を知るかの第一歩ですね。
うまく歌える「からだ」のつかいかた
『うまく歌える「からだ」のつかいかた 』
(川井弘子著/誠信書房)
声楽のレッスンにおいて、「頭の上から声を出して~」とか「頭の上で声をまわして~」とか言われることが多いと思います。
私もレッスンにおいて自分の感覚的に言ってしまうこともあるのですが、生徒さんによっては分からない人も少なくありません。
感覚的なことは人によって違うのでわかりにくいのは当たり前ですよね。
そんな時にこの本は大活躍します!
前に紹介した『歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』と似ているような感じですが、こちらの本は『からだ』の使い方と同時にからだを使ったエクササイズが詳しく書かれています。
声帯や体の筋肉については、そこまで詳しくは書かれていないので、
『体の使い方は分かった。じゃあどうすれば、具体的にその体を使って上手に歌えるようになるの?』
という方にぜひ読んでもらいたい本です。
この本には、ほかに『うまく歌える「からだ」のつかいかた 実践編』もあるので、さらに実践で使えるようになりたい方はこちらも併せて読んでいただきたいです。
声力トレーニング
『声力トレーニング』
(島村武男著/リヨン社)
この本を書かれた島村武男さんは、実は私が二期会オペラ研修所に通っていた時に担任の先生だった方です。
島村先生ご自身も素晴らしい声をされていて、教え方はとても分かりやすく的確な先生です。
島村先生の教え子の方々も皆優秀な方ばかりでした。
何しろ皆さん声が良いんです!
高音から低音まで全部きれいに出ているんですね。そして言葉が明瞭!!!
舞台上で聞くとはっきりしている歌声やセリフに驚かされます。
そんな島村先生の教え方が、この本で学べます。
体の使い方や発声、呼吸はもちろんのこと、
滑舌を良くしたい方にもその方法が書かれています。
劇団四季のオーディションでは台詞があります。
宝塚音楽学校の試験には面接があります。
そこで発せられる声が明瞭で力のある声であった方が審査員の方の耳に残ります。
声の力、声に魅力があることは舞台に立つ人間にとって大切なことです。
この本は、そのために必要なノウハウを教えてくれます。
また、呼吸や発声は分かっているのに、いまひとつ自分の声に自信がない方に読んでもらいたい1冊です。
さいごに
ご紹介した5冊は、私が発声や歌い方、声について悩んだ際に読み、助けられた本です。
もちろん本を読むだけではうまくはなりません。
このような歌うことに関する本を読み、自分の体や声について詳しく理解しながら実践し、分からないことがあれば自分の先生に『ここが分からない』と具体的に質問していけば歌は必ずうまくなっていきます。
ぜひ歌の上達に役立てていただきたいと思います。